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                 沢瀉は池や沢に自生する慈姑と同族の多年草である。 
                根のきわから伸びる矢尻状の葉が盛り上がっているので「面高」の名があるといい、あるいは「沢の潟れ」に生える草だから「沢瀉」と書くのだともいう。 
                古くは勝ち草とか将軍草などとも呼ばれ、縁起の良い草だった。 
                「おもだかや弓矢立てたる水の花」という句があるが、沢瀉が群生している状態を見ると、まるで弓矢を立て並べたように見える。 
                尚武の紋にふさわしい。武将が沢瀉威しの鎧を着用したり、沢瀉を戦勝の印しにしたのはそのためだ。 
                「平家物語」に熊谷次郎直実が沢瀉の文様を刷った直垂れを着ていたことがでているし、「源平盛衰記」にも「沢瀉威しの鎧に連戦葦毛の馬に乗った越前三位通盛」といった戦装が見られる。 
                沢瀉が家紋に採り入れられたのは、そうした武士の戦陣における縁起からきている。 
                あるいは沢瀉の葉が楯ににていて、防御のまじないになると考えたからかもしれない。 
                沢瀉紋には葉だけ用いるものと、葉と花を組み合わせたものとがある。 
                 
                前者は単に沢瀉といい、後者は「花沢瀉」とする。 
                沢瀉紋には葉の数によって「一つ沢瀉」から「九つ沢瀉」まであり、水を添えたものを「水沢瀉」という、ほかに「抱き沢瀉」「対い沢瀉」などがある。 
                 
 
                
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